2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

穏やかな眼差しの中で (仮題) 2

第一章 鎧(よろい) (仮題) 今から考えると奇妙なことだが、幼少期の僕は女性に恋をし、女性の身体に憧れる性質(たち)だった。保育園にあずけられていた頃、つまり五歳の頃にはすでに同園の女児に特別な感情を抱いており、そっぽを向かれて落ち込んだことを今…

穏やかな眼差しの中で (仮題) 1

序 森の匂いが山の向こうから運ばれてくる。頬にあたる冷たい風は僕に昔の記憶を呼び起こす。昔と言っても、それがどの程度昔であったか、あまりはっきりとはわからないほどに懐かしく、ぼんやりとしていて、それが今でも僕の体のどこかに澱として消化しきら…